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2007.12.29

懐古趣味

「昔の鉄道建設時代の色々な思い出話を聞きますと、到底世知辛いこの頃では、見られない痛快味のある技術者が多かったようです」「事実技術者としても、個人的な特色のある頑張り屋は、だんだんなくなって来た様に感ぜられます。これも時代の然らしむる処で、仕事が多くなり、複雑になり、専門化されて、万事共同作業が必要になってきた今日、昔のように個性をむき出しにして意見を固執し、頑張りあったのでは、到底仕事にならないでしょう。しかしともすると理屈無しに妥協的になりがちなこの頃の気分を見ますと、昔の生き方にも共鳴するところがあります。」「昔から名匠達人の極意は、いわゆる虎の巻で、これはただ多年の年期をかけてのみ、体得できたものであって、最近の様にどんな事でも、科学的に調べ上げて、これを知識として一般化して行くのとは、行き方が大分違います。」

これは最近読んだ鉄道の土木工事技術者の書いた回顧録の一部だ。東海道新幹線建設に携わった団塊の世代が書いたといってもいいような文章だが、実は書かれたのは昭和9年、熱海と三島を結ぶ丹那トンネル工事の話である。冒頭の「昔の鉄道建設の時代」は明治時代のことである。

昭和9年に「昔は良かった」と言っているのだ。
ほかにも荒くれ者の職人さんたちは紳士淑女の社交場であった熱海では嫌われていたとか、湯河原の下を通るトンネルも計画されたが湯河原温泉が枯れたら困るので計画は立ち消えになったとか面白い話がてんこ盛りだった。

鉄道省熱海建設事務所編 『丹那トンネルの話』 本は非売品だが全文がネットで読むことができる。
リンク先では土木学会が選ぶ戦前土木名著100書がすべてネット上で読むことができる。丹那トンネルの話以外にも面白そうな本がたくさんあるのでぜひ読んでみたい。

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コメント

ママママ、マジで!!!!!!!?
この文章、ひょっとしたら・・・?と思いましたが、「丹那トンネルの話」とは・・・・!
この本は、10年ほど前に元国鉄総裁で西武鉄道の社長も務めた土木畑出身の仁杉巌さんが中心となって復刻に尽力されて、丹那マニアであった私はそのときに購入したのです。
本当に、昨今の技術屋さん、理系の人の文章力のなさを日頃から痛感している私としては、昔のエンジニアの表現の豊かさ、文章力に驚かされる、一級の読み物ですよね。掘り抜いてみれば、ざっと芦ノ湖4杯分の水がトンネルから湧き出てきたという記述を、いつも大観山で芦ノ湖を見るたびにしみじみと思い出してしまいます。
ゴッタルド、シンプロン、英仏海峡、青函・・・世界に名トンネル数あれど、延長でいえば今では大したことない丹那トンネルが、土木史に燦然と輝く金字塔であることを(工事の難易度で言えば中山と鍋立山も)、後世に伝えてくれる名著だと思います。今はPDFで読めるんですね。もちろん、商業ベースに乗るような本ではありませんが、こういった本は定期的に再販して欲しい・・・ぜひ、ごつさんも古本屋などで見つけたら入手してみてください。
熱海から熱函道路を抜け、丹那盆地が見えてきた時、この下に世紀の大工事の結晶が貫いていて、苦も楽も共にした盆地のドラマに思いを馳せるのが楽しみで、つい熱函道路を通ってしまいます。それが初代の追突事故の遠因なのですが・・・w いや、本当にこの本について触れた日記を読めるとは思いませんでした。ま、私のレスは当然想定されてのことでしょうがwwww、誠に感慨深いエントリでございました。

投稿: 青軍 | 2007.12.29 23:32

>青軍さん
何らかレスを頂けるとは思っていましたが、まさかここまで熱いレスを頂けるとは!
私にとって滝知山はアマチュア無線の移動運用先でして、滝知山山頂にある無線塔の駐車場のそばにある「丹那トンネルこの下」の看板が丹那トンネルとその歴史を知るきっかけでした。
今から70年近く前に書かれた本で、旧漢字や旧仮名遣いで読みづらい文章ではありますが、当時最先端の技術を誇ったであろう技術者たちの誇りに満ちた文章がとても印象的でした。
彼らが嘆く「無個性ないまどきの技術者」も、今から見れば十分個性的で魅力的なのに(笑)と思いついついネタにしてしまいました。
実は私が好きな東海道線のトンネルは、東戸塚にある清水谷戸トンネルなんです。青軍さんには釈迦に説法だと思いますが、東海道線東京小田原間唯一のトンネルで日本で現役の鉄道トンネルとしては最古(120年前!)の物です。
毎朝レンガ造りのトンネルを通るたびに1世紀以上昔のトンネル技術者に思いを馳せる私なのでした。

投稿: ごつ | 2007.12.30 01:39

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