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2009.05.01

「黒部の太陽(テレビ版)」をようやく見た

その昔、建設会社にはそれぞれ得意分野があった。
日本初の鉄道を敷設した「鉄道の鹿島」とか医療・福祉関連施設に強い「病院の戸田」、呉・佐世保など海軍の工事に携わった「水の土木の水野組(現五洋建設)」などなど、愛称とともに語られる建設会社は多い。

「トンネルの熊さん」こと、トンネル工事にその名を馳せた熊谷組が手がけた難工事、黒部第四ダム大町トンネルの苦難を描いたのがこのドラマである。
言わずと知れた石原裕次郎の名作映画「黒部の太陽」のリメイクであるが、これは正直荷が重いと思った。
なにしろ石原裕次郎版はビデオやDVDになっておらず、テレビ放送もされない真の「幻の映画」である。
めぞん一刻で五代が言っていたが、もう会えないものを超えるのはそれはそれは大変なのである。
私は映画版を見たことが無いので超大作スペクタクルムービーのイメージが完璧に出来上がっている。
そんな人相手に主演を演じた香取慎吾も大変だっただろうが、キムタクが言ったという「慎吾の背中が石原裕次郎に見えた」は無いと思った。私の裕ちゃんのイメージは木暮課長だけれども。

ドラマで香取が演じたのは倉松班という熊谷組の下請け会社の親方である。
実際の工事では笹島班(現笹島建設)という下請け会社が工事を請け負った。笹島班は笹島建設となり今でもトンネル工事専門の建設会社として活躍している。

ドラマでは破砕帯という地下水を大量に含んだ地層を掘り進む苦労を描いているが、香取が演じた親方のモデルともなった笹島建設の社長は「今は労働条件的にもあんなことはできません」というほどの難工事だった。
ところが笹島班が掘る反対側からは間組が迎掘りをしている。
こちらは黒部渓谷側から掘り進んだので、重機などは搬入できず基本的に手堀りだった。
しかもその資機材も標高3000m近い立山を越えて黒部渓谷まで運ぶという過酷なものだ。
富士山や立山から動員された強力さんがブルドーザーを分解し、担いで山を越えるなどこちらの工事もとてつもないものだった。

他にも全てが険しい渓谷の地下に建設された発電所や作られた電気を関西方面に送る送電線など大町トンネルだけでなく難工事は他にもいくつもあっただろう。
映画のおかげか大町トンネルだけが黒四ダム建設工事だと思われてしまうかもしれないが、このトンネルはダム建設資材搬送のための工事であり、ダムの完成はトンネルが貫通した5年後だ。足りない足りないと言っていた電気がよくもまあもったもんだと思う。

笹島建設の社長は「昔は職人気質で、人のできないことをやってやるという強い思いをもっていました」と当時を振り返る。
なんかどこかで聞いたことあるな~…
昭和9年に書かれた丹那トンネル工事の苦難を書いた本「丹那トンネルの話」に同じようなセリフが載っている。
フジテレビも評価の確立した黒部の太陽をリメイクするより、「丹那トンネルの話」の、戦前日本の誇るべき土木技術とそれに掛ける男たちを完全ドラマ化したほうが「伝説」を作れたんじゃなかろうか。
今回のドラマが意外と面白かっただけにそんなことを考えた。

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コメント

私の祖父が黒部側から間組として工事を担当の中にいました
それが祖父のもっとも誇りにしていた工事のようです
名もない人が次々と亡くなっていったようですが、実際名前の残っているひとだけがカウントされてあとはカウントされなかったようです。

祖父の口癖は鹿島たちにやられた。ええとこだけもっていかれた。大変なとことだけやらされた。
でした(o^-^o)

投稿: てつまる | 2009.05.04 20:20

確かに破砕帯を掘り抜くというのは大変だったと思いますが、秘境側からのトンネル工事というのも想像を絶します。
「ダムのハザマ」の異名を持っていた間組がダム本体工事を受け持ちましたが、ハザマのホームページを見ると「工事用トンネルの完成を待っていられなかった当社は、標高2,700mの立山一ノ越峠を越え、資機材や食料などを人力で運び上げました」などダム工事を担う誇りを感じます。

投稿: ごつ | 2009.05.05 03:40

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